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好酸球性副鼻腔炎と嗅覚障害

副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎

近年、好酸球性副鼻腔炎という、難治性の副鼻腔炎の患者さんが増えています。この病気を日本で初めて発見して2001年に好酸球性副鼻腔炎という病名を提唱したのは、私が当院開院前に鼻副鼻腔班の班長をつとめさせてもらっていた、慈恵医大耳鼻咽喉科学教室です。

好酸球性副鼻腔炎とは

好酸球性副鼻腔炎とは、多発性の鼻茸(鼻ポリープ)で鼻閉と嗅覚障害を起こし、通常の薬が無効で、内視鏡下鼻内手術を行っても再発が多い、難治性の副鼻腔炎です。白血球の一種である好酸球が、血液や粘膜で増えているのが特徴です。しばしば喘息(とくにアスピリン喘息)を伴い、好酸球性中耳炎を合併することもあります。アスピリン喘息とは、ほぼすべての解熱鎮痛剤と、着色料や防腐剤などいろいろな誘発物質で喘息を起こす病気です。

鼻内内視鏡写真

好酸球性副鼻腔炎の副鼻腔入口部内視鏡写真です。

 

鼻腔はたくさんの鼻茸で充満しています。数年前までは耳鼻咽喉科の先生の中にもこの病気を知らない方が多かったですが、現在は手術が必要になるような重症の副鼻腔炎の2割以上がこの病気であることが分かり、たくさんの方に知られるようになってきました。

 

しかし、それでもまだあまりこの病気を診たことのない先生も多いようです。好酸球性副鼻腔炎は、通常の副鼻腔炎の治療は無効ですので、しっかり診断して治療を行うことが必要です。

好酸球性副鼻腔炎の診断基準と難病指定

好酸球性副鼻腔炎は難病に指定されています。当院は難病指定病院であり、院長は難病指定医なので、この病気で難病に認定されている方は、診察料の窓口負担分が、通常の3割から2割になるなどの助成があります。

 

ただし、全ての好酸球性副鼻腔炎の患者さんが難病に認定されるわけではありません。難病に認定されるのは、次の1)か2)の方だけです。

1)重症度分類で中等症以上
2)好酸球性中耳炎を合併している場合

 

<診断基準>
以下に示す点数(JESRECスコア)の合計が11点以上を示し、鼻茸組織中好酸球数(400倍視野)が70個以上存在した場合を確定診断とする。
 
•病側:両側       3点
•鼻茸あり     2点
•CTにて篩骨洞優位の陰影あり   2点
•末梢血好酸球(%)  2<  ≦5     4点
            5<  ≦10     8点
                         10<          10点 
 

<重症度分類>

右上の図と以下は、難病情報センターのサイトから引用したものです。

CT所見、末梢血好酸球率及び合併症の有無による指標で分類する。
 
A項目:①末梢血好酸球が5%以上
②CTにて篩骨洞優位の陰影が存在する。
B項目:   ①気管支喘息
②アスピリン不耐症
③NSAIDアレルギー
 
診断基準JESRECスコア11点以上であり、かつ
1.A項目陽性1項目以下+B項目合併なし:軽症
2.A項目ともに陽性+B項目合併なし or
A項目陽性1項目以下+B項目いずれかの合併あり:中等症
3.A項目ともに陽性+B項目いずれかの合併あり:重症

 

JESRECスコア11点以上というのは、症状から好酸球性副鼻腔炎を疑われる方の多くが満たすのですが、確定診断のための鼻茸組織中好酸球数(400倍視野)が70個以上というのが、なかなかクリアーできない場合があります。

 

診断、治療と難病申請の流れ

1 問診で、症状と気管支喘息、中耳炎合併の有無などを確認します。

 

2 内視鏡で鼻内を観察し、鼻茸の有無と程度、後鼻漏などを記録します。

 

3 においアンケートで、嗅覚障害の程度を判定します。

 

4 副鼻腔レントゲンを撮影します。(CTを予約する場合は、省略することもあります)

 

5 血中好酸球を見るため、採血をします。

 

6 必要な場合は、当院の近隣の施設でCTを撮影する予約をします。

 

7 難病申請を希望される場合は、局所麻酔下に、鼻茸の一部を切除して、鼻茸組織中の好酸球数を計測するため病理検査に提出します。結果は1週間ほどで分かります。

 

8 難病申請を希望されない場合は、すぐ治療を開始してステロイドの内服などを処方します。

 

9 CTと病理検査を行う場合には、それが終わるまではステロイドの内服はせず、1週間ほど後(CT撮影が終わり、血液検査と病理検査の結果が出ている頃)に受診していただき、必要であれば、ステロイド治療を開始します。

 

10 検査結果が、難病の判定基準を満たすものであれば、役所で書類を準備していただき、当院で臨床調査個人票(診断書)を作成しますので、それを添えて申請をしていただきます。

 

*申請しても、十分基準を満たさない場合には、不認定とされる場合があります。

 

好酸球性副鼻腔炎の治療

現在のところ確実に有効な薬は、ステロイドの全身投与(内服)だけです。多くの患者さんで、数日の内服で鼻茸が縮小し、症状が劇的に改善します。しかしそれだけで完治するわけではなく、ステロイドは副作用の可能性があるので長期は続けられないので、ステロイドをやめてしばらくすると再燃し、症状を繰り返すことが多いです。

 

重症例には内視鏡下副鼻腔手術を行います。

 

病態の研究も進み、いろいろな新しい治療法も開発されており、将来的にはもっと有効な治療法ができると期待されています。

 

最近になって保険適応になったのは、デュピクセントという注射薬です。これは、好酸球性副鼻腔炎にも関与する「IL-4」と「IL-13」という物質(サイトカイン)の働きを直接抑える薬です。本庶佑先生がノーベル賞を取って有名になったオプシーボのような分子標的薬の仲間です。あまりにも高額なため、まだあまり普及していません。

内視鏡下副鼻腔手術

好酸球性副鼻腔炎に限らず、現在副鼻腔炎手術のほとんどは内視鏡で行われています。

 

院長は日本における内視鏡下副鼻腔手術のパイオニアである慈恵医大耳鼻咽喉科で、数多くの手術を手掛けてきました。右は1995年に出版された日本最初の内視鏡下副鼻腔手術の本ですが、院長も6人の共同著者のひとりです。

 

当医院開業後も内視鏡下副鼻腔手術I型を中心に日帰り手術を行っていますが、入院が必要な手術は慈恵医大鼻副鼻腔班の後輩だった副鼻腔手術の専門家の先生たちをご紹介しています。

病院紹介

  • 東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科 鴻信義教授

  • 太田総合病院耳鼻咽喉科

  • 東邦医科大学医療センター大橋病院耳鼻咽喉科 吉川衛教授

  • 松脇クリニック品川(1泊入院による手術)松脇由典先生、柳清先生(前聖路加国際病院耳鼻咽喉科部長)

内視鏡手術は日帰りでできませんか?

内視鏡手術は程度によって分類されており、程度の軽いものは日帰りでも行え、当院でも内視鏡下副鼻腔手術I型を中心に手術を行っています。しかし程度の重いものは、術中術後の合併症のリスクもあるため、入院設備がある病院で行うべきです。

内視鏡手術はどの病院で受けても治りは同じですか?

残念ながら内視鏡下副鼻腔手術の成績は、術者の経験と技量によって違う場合があります。当院では、慈恵医大の鼻副鼻腔班の後輩だった先生たちが、手術の名手として大学教授や大きな病院の耳鼻科部長として活躍していますので、それらの先生方に依頼しています。

何日も入院することはできないのですが、方法はありますか?

短期入院しかできない方には、1泊入院での手術が可能なクリニックを開院している先生をご紹介することもできます。

嗅覚検査と嗅覚障害の治療

嗅覚障害の原因として一番多いのは副鼻腔炎です。好酸球性副鼻腔炎が典型的ですが、他の副鼻腔炎でも嗅覚障害は生じることがあります。複雑な味覚は嗅覚の助けがあって感じますので、嗅覚が鈍くなると味覚も弱く感じます。

 

当院では、鼻腔の観察に特化した細径内視鏡で嗅裂などを観察し、副鼻腔レントゲン撮影を行います。また、においアンケートで嗅覚障害の程度を評価した上で、必要に応じて、オープンエッセンスという新しい方法で、嗅覚検査を行っています。

 

副鼻腔炎による嗅覚障害は、副鼻腔炎の治療とステロイドの点鼻で、ほとんどの方が治ります。

 

しかし、好酸球性副鼻腔炎では、点鼻だけでは嗅覚は戻らないことが多いです。好酸球性副鼻腔炎の患者さんの多くは気管支喘息を合併していますが、喘息治療でステロイドと気管支拡張剤の合剤を吸入するとき、吸った空気を口からではなく鼻から吐き出すと、効果が出る場合があります。

 

嗅覚障害の原因として副鼻腔炎の次に多いのは、感冒(風邪)のウィルスによる嗅神経の障害です。嗅神経の修復には、当帰芍薬散などの漢方薬が有効な場合があります。

 

1日何回か、数種類のにおいを10秒ほど意識してクンクン嗅ぐトレーニングも、有効とされています。

 

 

ステロイド点鼻のための快適な姿勢(Kaiteki(快適) positon)

 
ステロイド点鼻の具体的な方法です。
 
嗅覚の細胞は鼻の中でも脳の直下である天井の方にしかありませんので、そこに点鼻薬を入れるために、以前はのけぞって頭を後ろに垂らす苦しい姿勢(懸垂頭位)での点鼻がすすめられることが多かったですが、当院ではもっと楽で効果的な以下のような姿勢で行うことをおすすめしています。
 
  • 1

    点鼻する側を上にして、横になります。

  • 2

    そのまま首を回して顔を30度上に向けます。

  • 3

    次に顎を30度上げ上側の鼻に数滴点鼻を行い、しばらくそのままでいます。

  • 4

    身体を起こすと薬がのどに落ちてくるので飲み込まずに口から出して、うがいをして薬を洗い流します。

  • 5

    反対側も同様に点鼻します。