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難治性中耳炎と鼓膜チューブ

小児耳鼻咽喉科

難治性反復性の急性中耳炎は2歳未満の小さいお子さんに多い病気で、秋から春までずっと高熱や痛みを繰り返すことがあります。

 

生まれて半年ぐらいはお母様から受け継いだ免疫があるのであまり中耳炎にはならないのですが、それを過ぎると2歳ぐらいまでは自分の免疫力が弱いので、中耳炎を起こしやすいのです。

 

このようなお子さんでは、抗生物質がなかなか効かず、効いても抗生物質が終わるとすぐ再発することがあります。このような場合には、鼓膜にチューブを入れることによって治癒させることができます。

大きな病院で全身麻酔で行われることもある手術ですが、当院では可能な限り局所麻酔で行い、患者さんとご家族の負担を減らすようにしています。

 

乳幼児の重症の急性中耳炎では、強い痛みと熱を取るために鼓膜切開が必要になることがあります。

鼓膜切開をすればすぐに痛みは軽くなり、熱も翌日には下がっていることが多いですし、鼓膜の孔が開いている間は中耳炎も悪化しません。

しかし、その孔は数日で塞がってしまうので、そうするとまた熱や痛みが出るという繰り返しになることがあります。

 

鼓膜のチューブは、もともとはもう少し大きい子の滲出性中耳炎に対して行われる手術ですが、反復する難治性の急性中耳炎で鼓膜切開をしたときに、その孔にチューブを入れてしまえば、チューブが入っている間はほとんど中耳炎にならないし、なってもすぐ治ることが多いのです。合併症もほとんどありません。

当院における2歳未満の鼓膜チューブ留置

下の表は当院の2歳未満の鼓膜チューブ留置手術件数(平成14年10月~平成27年5月)です。

 

2歳未満の反復性中耳炎では、中耳炎の急性増悪時(膿が貯まって鼓膜が腫れ、熱や痛みが強くて鼓膜切開が必要な時)、鼓膜切開と同時にチューブを留置することが多いです。

 

急性増悪時にチューブを入れることは、技術的には難しいですが、鼓膜切開をして中耳炎を軽くしてから、改めて別の日に手術をするのでは、2度鼓膜切開の負担を強いることになるからです。

 

耳鼻咽喉科で大きな問題になっていた2歳未満の難治性・反復性中耳炎の患者さんは、新しい抗生物質の登場や肺炎球菌ワクチンの普及で、この数年でかなり減りました。しかし、それでも治らない急性中耳炎のお子さんはまだいます。その場合はチューブ留置が有用です。

手術時年齢 反復性中耳炎急性増悪時 反復性中耳炎“寛解”期 滲出性中耳炎
0歳 87 2 3 92
1歳 197 10 20 227
2歳 36 2 24 62
320 14 47 381