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内耳(難聴、めまい)

耳の病気と検査

外耳:耳の入り口から鼓膜まで。顔の皮膚の続きです。

中耳:鼓膜の内側にあって鼻の奥(鼻咽腔=上咽頭)と耳管という管でつながっています。喉の粘膜の続きです。

内耳:音を感じる蝸牛(かたつむりに形が似ているのでそう呼ばれます)と平衡感覚を司る三半規管で構成されます。脳の神経の続きです。

 

外耳は耳の穴から見ることができますし、中耳の様子も鼓膜を透かしてある程度分かりますが、その詳細な観察には内視鏡(鼓膜鏡)や顕微鏡が必須です。

中耳の詳しい様子や機能を知るためには、聴力検査ティンパノメトリーといった検査が必要になります。

内耳は外から見えませんから、その診断には聴力検査赤外線眼振検査が必須です。

内耳の検査

聴力検査

正式には標準純音聴力検査と言います。防音室に入っていただき、ヘッドホンをつけて、音が聞こえたらボタンを押していただきます。いろいろな高さ(周波数)の音について検査します。こうして得られた結果を気導聴力と言います。

 

次に耳の後の骨の出っ張りに振動板を当てて検査をします。音を感じる内耳は耳の奥の骨の中にありますが、耳の後に当てた振動板の振動は骨を伝わって内耳まで届き、音として感じられます。この振動は検査をする耳の反対側の内耳にも届いてしまいますから、反対側の耳にはわざとヘッドホンから雑音を聞かせて、骨の振動からの音を聞き取れないようにします(マスキング)。こうして得られた結果を骨導聴力と言います。

 

おおざっぱに言うと、外耳や中耳の病気では、気導聴力の方が骨導聴力より低下します。一方内耳の病気では、気導聴力と骨導聴力は同じ程度に低下します。また、どの高さの音の聴力が低下するかは、病気によって特徴がありますから、聴力検査は耳の病気の診断の大きな手がかりになります。

 

OAE(耳音響放射)

普通の聴力検査のできない小さなお子さんの聴こえを確かめる方法はいくつかありますが、当院ではOAE(歪成分耳音響放射)という検査を行うことができます。内耳では、入力された音を増幅するアンプの機能があるのですが、ここからの音の放射を耳音響放射と呼びます。

この検査はあくまでスクリーニング検査で、最終的に難聴を診断するものではありません。他の検査や鼓膜の所見と合わせて判断すことが必要です。

 

現在当院では行っていません。

めまいと赤外線眼振検査

めまいには、ぐるぐる回る回転性、ふらふらする浮動性、目の前が暗くなる失神性があります。一般的には、回転性のめまいは、内耳の病気が多いと言われますが、そうでない場合もあります。

 

眼振というのは、めまいの時に起きる眼球の異常な動きで、これによってめまいの診断のために必要なことが、いろいろ分かります。眼振は何かを見ていると抑制されて分からなくなります。暗闇で何も見えない状態を作ると、眼振がはっきり出ますが、暗闇では目の動きも見えません。そこで、目隠しをして暗闇の状態をつくり、赤外線カメラでそれを観察したり記録したりする装置が工夫されました。それが赤外線眼振検査装置です。

 

めまいを訴える方は結構多くいらっしゃいます。心配のないものもあれば、早急に治療を要する病気の方もいらっしゃいます。赤外線眼振検査装置によって、めまいの患者さんの診断を、より正確に行うことができます。

 

めまいの検査としては他に、姿勢制御の検査、小脳症状の検査などを行います。めまいで一番怖いのは小脳の病気ですから、それはしっかり鑑別しなければなりません。

 

他に血圧を姿勢を換えて測定します。寝た姿勢から起きた姿勢になると、重力に逆らって血液を脳に届けなければなりませんから、血圧は少し上がるぐらいでちょうどいいのですが、それが下がってしまうことがあります。血圧が下がってしまうと、脳に十分な血液が行かなくなりますから、めまいが起きたり意識がボーとなったりします。起立性調節障害と呼ばれる状態です。血圧あるいは血液の循環の調節をしている自律神経の働きが悪くて起きることが多いです。

 

内耳は自律神経で胃とつながっており、そのため内耳性のめまいの発作時には吐きけや嘔吐が起きます。また内耳は頸部の筋肉とも神経でつながっているため、肩こり、さらに頭痛が起きることも多いです。これらに対する、対症療法も必要になります。

 

次に代表的なめまいの病気をあげます。大きく分けると次の①〜④の4つあります。

良性発作性頭位めまい症

内耳性の病気で一番多いのは、良性発作性頭位めまい症(BPPV)です。良性=比較的短期間で治る、発作性=きっかけなく急に発症する、頭位=頭の位置を変えると起きる、めまいです。内耳の中の耳石という石がはずれて、三半規管の中に入って起きる病気です。

 

最近は頭を特定の向きに動かして、石を三半規管の外に出す方法を行う場合があります。うまくいくとすぐめまいが治まるのですが、そのためには石のある三半規管の部位を正確に特定しなければならず、それを誤って間違った方に頭を動かすと、悪化することもあります。始めの強いめまいが一段落して、少し軽くなっていれば、生活の中の動きで、1週間ないしは2週間で、自然に石が三半規管から出てくれるので、軽症であればそれを待ってもよいと考えています。

メニエール病

次に有名なのは、メニエール病でしょう。内耳の中のリンパ液が増えすぎて起こる病気です。内耳には平衡感覚と聴覚の両方の器官があるので、めまいだけでなく聴力低下も起きますが、めまいの方がつらすぎて、難聴はあまり感じられない患者さんもいらっしゃいます。発作期の治療は安静、メイロン(重曹水)の点滴、精神安定剤の投与です。

 

回復期には、イソバイド(内耳の水を減らす浸透圧利尿剤)、内耳の循環を改善する薬などを飲んでもらいます。ある程度回復したら、少しずつ通常の生活をしていただきます。中枢代償といって、少しぐらいの内耳機能障害があっても、身体を動かしていると脳が適応してくれてめまいは軽くなるからです。それでも、急激な動きは、ひかえていただきます。タバコ、塩分、アルコールのとりすぎも良くないですが、けっこう気がつかずにとりすぎてしまうのがカフェインです。カフェインには、とくに注意をして飲まないようにしていただいています。

 

メニエール病は治っても、また繰り返すことの多い病気です。そういう素因のある方が、寝不足や疲労をきっかけに起こします。

前庭神経炎

内耳の炎症です。典型的な内耳性めまいを示しますが、あまり多くはありません。ウイルス感染が原因と考えられます。

内耳は自律神経で胃とつながっており、そのため内耳性のめまいの発作時には吐きけや嘔吐が起きます。また内耳は頸部の筋肉とも神経でつながっているため、肩こり、さらに頭痛が起きることも多いです。これらに対する、対症療法も必要になります。

めまいは内耳の病気だけでなく、他の原因でも起きます。その鑑別も大切です。